歴代スカイラインGTR(R32/R33/R34)の歴史!新車価格やスペック等
最高出力650ps、最高速度330km/hの湾岸最高速仕様R33GTRに乗っていた当ブログの執筆者斉藤良男が、第2世代のスカイラインGTRとなる歴代R32/R33/R34スカイラインGTRの歴史について、徹底解説します!
人気が衰えることのない第2世代のスカイラインGTR
第2世代のスカイラインGTRについて、どのようなイメージを持つだろうか。
ある人はセラミックタービン採用のRB26エンジンかもしれないし、ある人は電子制御トルクスプリット4WDのアテーサE-TSかもしれないし、ある人はグループAレースでの29連勝を思い浮かべるかもしれない。
いずれにせよ、日本車史上において最強の車という認識を外れることはなく、誰もがその速さを認めるに違いない。
一方、R32GTRが登場してから30年以上が経過し、R34GTRが生産中止になってからも既に20年以上が経過している(2024年現在)。
一般的な中古車であれば、売却しても値段が付くことはない古さである。
しかし、R32/R33/R34GTRの評価は衰えることなく、信じられないほど値上がりしている。
R35GTRにMTの設定はないこともあり、R32/R33/R34GTRの人気は世界中で極めて高い。
そのため、中古車価格は高騰し、当時の新車価格を超えているという状況だ。
R32スカイラインGTRの評価・新車価格・スペック・中古車相場
チューニングカーの常識を変えた!日本車史上に燦然と輝く不朽の名車
1973年、当時、世界的に問題となっていた自動車の排気ガス問題で、KPGC110型スカイラインGTRはわずか197台の生産で打ち切られることになった。
その後、日産ディーラーには、販売再開はいつになるのかという問い合わせが相次ぐ。
しかし、当時は16年もの間が空くとは誰も思っていなかったに違いない。
そして、1989年、ついにスカイラインGTRが復活する‥。
絶大な人気を誇り、今でも評価の高いR32スカイラインGTR
R32スカイラインGTRの評価は、令和に入った現在でも決して色あせることはなく、その人気は衰えることがない。
搭載するのはRB26DETTと名付けられた、極めて高性能な専用設計の直列6気筒DOHCエンジンである。
6連スロットルチャンバー、金属ナトリウム封入バルブ、ダイレクトイグニッションシステム‥。
いずれも当時としては最先端の技術である。
また、エンジンに1つしか必要のないスロットルチャンバーを各気筒に1つずつ(合計6つ)設けるなど、コスト度外視で速く走ることを目的に設計されたエンジンであることは明白であった。
2568CCという何とも中途半端な排気量は、レースで勝つために綿密に計算された結果によるものだ。
レッドゾーンは8000回転であり、この排気量のターボにしては異例の高回転型エンジンである。
これにセラミックタービン採用のツインターボを装着し、さらにアテーサE-TSとスーパーHICASを組み合わせた駆動方式は圧倒的な速さを誇る。
R32GTRが登場した時期はバブル経済と重なっており、空前の好景気と相まってチューニング業界が最も華やかだった。
あるチューナーは言った。
ノーマルでもこんなに速いならチューニングする必要を感じないと。
別のチューナーは言った。
R32GTRの登場でこの業界は20年進化したと。
第2世代でも最も軽量・コンパクトなボディーも評価が高く、現在に至るまで絶大な人気を得ている。
R32スカイラインGTRの新車価格・スペック
R32スカイラインGTRの新車価格は、わずか445万円であった。
その性能を考えれば破格の安値と言えるだろう。
R32/R33/R34共にRB26DETTエンジンであることから馬力は全て同じであるが、最大トルクは若干異なる。
型式 | BNR32 |
---|---|
全長 | 4545mm |
車幅 | 1755mm |
全高 | 1340mm |
ホイールベース | 2615mm |
車両重量 | 1430kg |
総排気量 | 2568CC |
最大馬力 (ps/rpm) |
280/6800 |
最大トルク (kgm/rpm) |
36.0/4400 |
トランスミッション | 5MT |
サスペンション | 独立懸架マルチリンク (前後) |
ブレーキ | Vディスク (前後) |
タイヤサイズ | 225/50R16 |
10モード燃費 | 7.0km/l |
60km/h定地燃費 | 14.4km/l |
新車価格 | 445.0万円 |
R32スカイラインGTRの速さ・加速性能
R32スカイラインGTRの速さ・加速性能を実験したデータを紹介しよう。
デビュー当時、R32スカイラインGTRの加速性能は市販車最速レベルにあった。
0-50m加速はフェラーリF40さえも凌ぐタイムである。
0-50m | 3.75秒 |
---|---|
0-100m | 5.68秒 |
0-200m | 8.73秒 |
0-400m | 13.58秒 |
0-100km/h | 5.36秒 |
R32スカイラインGTRの新車販売台数
R32スカイラインGTRの新車販売台数を年式別・グレード別に示す。
年式
|
販売台数
|
---|---|
1989 |
4555
|
1990 |
8426
|
1991 |
7081
|
1992 |
7961
|
1993 |
6204
|
1994 |
7645
|
後述するR33/R34GTRは、発売当初に売り上げが集中しているのに対し、R32GTRは年式に偏りがないことが特徴だ。
続いて、R32GTRのグレード別総販売台数を示す。
グレード
|
総販売台数
|
---|---|
標準 |
40390
|
ニスモ |
560
|
Vスペック |
1453
|
VスペックⅡ |
1303
|
N1 |
228
|
R32GTRのグレードは圧倒的に標準車が多い。
販売台数の少ないニスモ/Vスペック/VスペックⅡ/N1は中古車相場も特に高騰しており、今となっては入手するのが困難だ。
カーセンサーで見るR32GTRの中古車相場。維持費も考慮する必要あり
2019年9月現在、カーセンサーを見るとR32スカイラインGTRの中古車相場は、中央値で400~500万円程度になる。
2023年時点では、2019年から200万~300万円値上がりしている。
2003年ごろは100万円以下の車両がゴロゴロしており、中央値でも170~180万円程度であった。
平成元年に登場してから35年が経過して令和5年になった今、約35年落ちという年式を考慮すると現在の中古車相場は一般的な常識では考えられない異常事態と言ってよい。
映画「ワイルドスピード」などの影響で日本のスポーツカーの人気が高まっており、海外輸出されていることなどが原因と言われている。
現在のR32GTRの人気や評価を考えると、今後も中古車相場が下がることは考えにくいだろう。
年式を考えると、ブッシュ類などゴム製品のへたりはかなり進行していると思われるので、そういった箇所をリフレッシュするための維持費も見越しておく必要がある。
いや、メンテナンスと言うよりもレストアも視野に入る年式だろう。
R33スカイラインGTRの評価・新車価格・スペック・中古車相場
不当な評価で不人気と言われたR33スカイラインGTR
R33GTRを所有していた元オーナーとして私自身から言わせて頂くと、R33GTRは第2世代のスカイラインGTRの中で最も不当な評価をされていると言わざるを得ない。
大きくて重いから不人気だったという印象を持つ人が多いようだが、R34GTRよりも車重は軽く、販売台数も多いことは注目に値する。
この事実は意外と知られていない。
では、なぜR33GTRはこよのうな不当な評価が根付いてしまったのか。
それは、R32よりも大きく重くなってしまったことに対して、必要以上にネガティブなイメージを付与されてしまったことだろう。
スカイラインは当時の日産の主力車種であり、GTRはそのスカイラインから派生した、いわば亜種にすぎなかった。
日産の利益を考えるならば、ベースとなるスカイラインの売り上げを伸ばすことを考えなくてはならない。
R32スカイラインの販売を担当した日産ディーラーの営業マンからは後席の狭さを指摘する声が相次ぎ、その声を受けてR33スカイラインではホイールベースを105mm拡大することになった。
それに伴い、車重も100kg増加したことが、モータージャーナリストには否定的に受け止められた。
大きく重くなったと。
しかし、ニュルブルクリンクでのタイムはR32GTRより21秒も短縮しており、動力性能は確実に向上していたのだ。
この事実を日産は「マイナス21秒ロマン」というキャッチコピーで内外に示す。
なお、R33GTRのニュルブルクリンクにおけるタイムは、R34GTRより速いと言われている。
その理由は、R32GTR・R33GTR・R35GTRはニュルブルクリンクでのタイムを公表しているが、R34GTRだけが公表していないことにある。
これは、R34GTRのタイムがR33GTRより遅いから公表していないという説が強く、事実、それが強く推察されるだろう。
R33スカイラインGTRの新車価格・スペックやR32GTRとの違い
R33スカイラインGTRは、R32GTRから主に以下の装備やスペックが改良されたことにより、新車価格が33.5万円高くなった(標準車)。
- ブレンボキャリパーを全車標準装備
- インタークーラーの変更
- 過給圧力の向上
- コンピューターを8ビット→16ビットに
- サスペンションのセッティング変更
- 全長が130mm、ホイールベースは105mm拡大
- リアデフにメカニカルLSDを採用
- リアスポイラーが角度調整機構付に
型式 | BCNR33 |
---|---|
全長 | 4675mm |
車幅 | 1780mm |
全高 | 1360mm |
ホイールベース | 2720mm |
車両重量 | 1530kg |
総排気量 | 2568CC |
最大馬力 (ps/rpm) |
280/6800 |
最大トルク (kgm/rpm) |
37.5/4400 |
トランスミッション | 5MT |
サスペンション | マルチリンク/コイル (前後) |
ブレーキ | Vディスク (前後) |
タイヤサイズ | 245/45R17 |
10モード燃費 | 8.1km/l |
60km/h定地燃費 | 14.4km/l |
新車価格 | 478.5万円 |
R33スカイラインGTRの速さ・加速性能
R33スカイラインGTRの速さ・加速性能については、車重が重くなった影響により前述したR32GTRの到達タイムよりも若干遅い。
0-200m | 9.18秒 |
---|---|
0-400m | 13.80秒 |
0-100km/h | 5.76秒 |
しかし、上記で示したデータにはないが、高速域の加速はR33が上回る。
なお、リミッターカットして計測した最高速度は263.3km/hであった。
R33スカイラインGTRの新車販売台数
R33スカイラインGTRの新車販売台数は、バブル崩壊後の発売ということもありR32GTRよりも大幅に落ち込んでいる。
ただし、前述した通りR34GTRよりは販売台数が多く、販売台数は必ずしも人気と比例することはない。
新車の販売台数は、人気よりも販売時の経済状況の影響を大きく受けることがわかる。
年式
|
販売台数
|
---|---|
1995 |
8446
|
1996 |
4093
|
1997 |
2708
|
1998 |
1175
|
R33/R34GTRは、R32と違って発売当初に売り上げが集中しており、マイナーチェンジ後の後期型は販売台数が少ない。
続いて、R33GTRのグレード別総販売台数を示す。
グレード
|
総販売台数
|
---|---|
標準 |
9871
|
Vスペック |
6551
|
R32GTRの販売台数は大部分が標準車であったのに対し、R33GTRはVスペックの割合が高い。
R33スカイラインGTRの中古車相場
2019年9月現在のR33スカイラインGTRの中古車相場を見ると、最安値で300万円、中央値で500~600万円といったところだ。
2023年現在、2019年と比較して値幅が200万円程度上方に動いている。
2000年代前半には最安値で120~130万円、中央値で200~300万円だったが、当時よりも年式が大幅に古くなっていることも加味すると、実質的には数倍の値上がりと言えるだろう。
リフレッシュや維持費にお金がかかるのはR32と同様だ。
R33GTRには4ドアのオーテックバージョンもあり
R33GTRで一時期販売されていたオーテックバージョンは、歴代のスカイラインGTRの中で唯一の4ドア仕様である。
スカイライン生誕40周年を記念して受注生産されたが、販売台数はわずか442台であり、中古車市場にもほとんど出回ることはない希少車両である。
ちなみにカーセンサーで検索したところ5台がヒットし、うち3台は価格応談であった。
中古で購入するなら走行距離や仕様、色などは選べる状況にない。
ニスモ400Rは中古車でも手に入らない
R33GTRではオーテックバージョン以外にも、ニスモ400Rというコンプリートマシンが発売された。
排気量は2.8Lに拡大され、最高出力は400psまで高められている日産公認のチューニングカーだ。
新車価格は1200万円ということもあり、販売台数はたったの55台である。
筆者も現物を見たことはなく、どこに何台現存しているかもわからない。
中古車市場にも出回っておらず、幻のマシンと言えるだろう。
2022年11月、中古車オークションでニスモ400Rが登場し、話題をさらった。
オークションは入札の上限が9999万円であったが、その上限を振り切ってしまったのである。
その後、出品者と入札者がシステムを介さずに直接交渉して売却されたようだ。
執筆者が乗っていた最高速度330km/h、湾岸最高速仕様のR33GTR
当ブログ執筆者斉藤良男は、かつてR33GTRを所有する湾岸最高速ランナーであった。
T78-33D仕様で650馬力までチューニングされ、最高速度は330km/hを記録した(下記はGTRマガジンに掲載された執筆者の湾岸最高速仕様R33GTR)。
湾岸ではテール・トゥ・ノーズの激しいバトルが繰り広げられたが、その時の詳しい出来事は、私が運営する別ブログ「新型車・中古車情報館」で紹介している。
ブログの内容の一部を下記に抜粋するが、実体験に基づく湾岸最高速の現場をここまで赤裸々に公開しているサイトは恐らく他に存在しないだろう。
- 時速330km/hはどんな世界か?
- よく煽ってくるBMWのMスポーツあたりは秒殺する
- ランボルギーニディアブロも余裕でぶっちぎる
- 伝説の走り屋と言われたブラックバード(ポルシェターボ)は実在した
- 湾岸を走っているチューニングカーはどんな車種か
- ライバルは80スープラ
- 湾岸で出会った最も速い車
- 最後のバトル~湾岸で散る
興味がある人は「新型車・中古車情報館」と検索すれば現時点では閲覧可能だ(いずれ削除予定)。
当該ブログのトップページにおいて、「スカイラインGTR」のメニューから閲覧できる。
R34スカイラインGTRの新車価格・スペック・中古車相場
RB26エンジンを搭載車した最終型であり、中古市場での価格高騰が著しい
スカイラインの名が冠された最後のGTRとなるR34GTRは、1999年に登場した。
ボールベアリングを備えたセラミックタービン、ゲトラグ製の6速MTなどが採用されたほか、コンソール中央にマルチファクションディスプレイと呼ばれる車両の状態を確認する5.8インチのモニターが搭載され、水温、ブースト圧などがモニターで確認できるのは、当時、かなり斬新であった。
R35GTRはATのみのため、MTを搭載した最後のGTRとなり、かつ、最後のRB26エンジン搭載車となる。
そのため、中古市場においては価格高騰が著しく、新車価格を大幅に超える価格で取引されている状況だ。
R34スカイラインGTRの新車価格・スペック
R34スカイラインGTRの新車価格は、R33と比べ約20万円高い。
なお、先代でボディーサイズが拡大したことに対する批判から、R33より全長は75mm短縮された。
しかし車幅は5mmアップし、重量も10kg増加している。
エンジンスペックについては、自主規制により先代と同じ馬力であるが、トルクは若干アップしており、R33の弱点であった低回転域でのもたつきが改善されている。
型式 | BNR34 |
---|---|
全長 | 4600mm |
車幅 | 1785mm |
全高 | 1360mm |
ホイールベース | 2665mm |
車両重量 | 1540kg (Vスペックは 1560kg) |
総排気量 | 2568CC |
最大馬力 (ps/rpm) |
280/6800 |
最大トルク (kgm/rpm) |
40.0/4400 |
トランスミッション | 6MT |
サスペンション | マルチリンク/コイル (前後) |
ブレーキ | Vディスク (前後) |
タイヤサイズ | 245/40ZR18 |
10・15モード燃費 | 8.1km/l |
60km/h定地燃費 | 14.8km/l |
新車価格 | 499.8万円 (Vスペックは 559.8万円) |
R34スカイラインGTRの新車販売台数はVスペックが売れ筋
R34スカイラインGTRは、Vスペック(マイナーチェンジ後はVスペックⅡと呼称)&Mスペックの販売台数が標準車よりも多いことが特徴だ。
生産中止発表後に発売されたVスペックⅡ及びMスペックの各ニュルは、両車の合算で限定1000台であったが即日完売されるほどの人気であった。
販売されたニュルの内訳は公表されていないが、VスペックⅡニュルが750台、Mスペックニュルが250台と言われている。
年式
|
販売台数
|
---|---|
1999 |
5536
|
2000 |
1859
|
2001 |
2197
|
2002 |
1775
|
2003 |
2
|
グレード
|
総販売台数
|
---|---|
標準 |
3962
|
Vスペック Mスペック |
7338
|
VスペックN1 |
45
|
R34スカイラインGTRの中古車相場
前述した通り、R34GTRスカイラインGTRの中古車相場は高騰している。
2019年時点で、カーセンサーでは最安値でも500万円、中央値で800万円という値がついており、高すぎて容易に購入することはできない。
ニュルは市場にほとんど出回っておらず、販売されていても価格は「応談」などとなっていて値が付けられない状態だ。
実勢価格は3000万円とも言われている。
2023年現在、R34GTRは2019年よりも大幅に値上がりしており、価格帯は1100万円~5300万円、平均値で1800万円だ。
2003年頃は、最安値で350万円程度、中央値で400万円台前半であった。
以上、R32/R33/R34スカイラインGTRの歴史を述べてきた。
なお、スカイラインGTRの最高速に興味がある人は、本記事執筆者が湾岸最高速ランナーだった現役時代の実録を別サイトで詳細に述べている。
「新型車・中古車情報館」と検索し、「スカイラインGTR」のページに詳しく記載している。